ルポ 観光情報学会 第2回全国大会 パネルセッション2『風評被害~実際とその対策~』

北海道情報大学 情報メディア学部 斎藤 一

大内会長がコーディネータとなり,沖縄県観光商工部商工振興課の下地芳郎氏,沖 縄県旅行業協同組合の東良和氏,ゆざわ観光情報学研究会の岸野裕主査により,『風評被害~実際とその対策~』をテーマに,パネルセッションが行われた.始 めに,大内会長より,観光情報学会が風評被害に関する研究を行うことになった経緯が説明された(http://ses126.complex.eng.hokudai.ac.jp/modules/smartsection/item.php?itemid=64).

その後,下地氏より,沖縄県の観光危機管理について,米国のテロ発生時の経験をお話いただいた.沖縄県で風評被害が起こってしまった要因として,まず,米 国テロが発生し,航空機利用が一時的に控えられ,その後,マスコミによる米国基地が危険であると過剰報道され,その影響で,基地のある沖縄全体も危険とい う風評が広がってしまった.また,文部科学省による一部自治体への注意喚起文書等が連鎖的に作用し,最終的に沖縄への観光予定者の約25万人がキャンセル をし,209億円以上の損害を生んでしまった.風評被害の対策として,沖縄県は,"だいじょうぶさぁ沖縄"キャンペーンを展開.その他,航空路線別プロ モーション事業,メディアミックス事業,修学旅行誘致活動,通信教育企業キャンペーン(空港,旅館,ホテルなど)等が行われた.その結果,平成16年に は,観光客が515万人と過去最高となるなどの回復,成長を見せている.反省点として,初期対応の遅れ等があげられた.これらの経験により,風評被害対策 として,以下の提案がなされた.(1)観光危機管理(リスク)マニュアル作成すること,(2)風評内容を分析し,より効果的な対策を実施すること,(3) リピータ対応を強化すること,( 4)市場の多様化を図り,リスク分散に努めること.

続いて,東氏より沖縄の風評被害について,イ ンバウンドを中心にご自身の考えをお話いただいた.9.11以降,日本旅行業界に与えた影響は甚大であった.特に,修学旅行は,25万人から20万人,約 8割のキャンセルがあった.これは,保守的な学校関係者の体質が要因の一つであると考えられる.また,流通等の問題もあり,東京では,旅行代理店などで, 沖縄のパンフレットがなくなった.しかし,ダイビングスポット等では,現地の情報が重要視され,逆に沖縄に来やすい状況が発生した.残念ながら,沖縄の観 光全体として,「沖縄は安全」との,他の地域の人々の口コミ情報は集められなかった.今後は,情報のブランド力についても取り組みが必要である.

最後に,岸野氏より,越後湯沢の風評被害,および,対策についてお話し頂いた.先日の震災により,観光客は平均7割程度落ち込んだ.被災者の人的物的支援 として,救護活動,食料支援・燃料支援,炊き出し,容器等の支援がなされた.しかしながら,新潟-越後は被害なく,被害地域の正確なマップがなかったた め,風評被害が発生した.風評対策として,被災地での支援(街中のスノーキャンドル@100円による希望(アシタ)の灯りキャンペーン等)を行った.ま た,風用被害を訴えるキャンペーンを携帯電話やE-MAIL等も利用し,同時多発的行った.また,JRおよび日本道路公団の誤記事に対して情報提供中止を 訴える,6000円の運賃を500円としたワンコインバスを運行する,各宿泊施設が持つ顧客の掘り起こす,越後で統一したダイレクトメールを配信する,新 幹線の半額料金を実現する等の対策・キャンペーンを行った.この結果,最終的に観光客は,130%増加した.今回の件で,被災地域住民へ最大限の配慮をす ること,正確な被害情報の提供すること,マスコミを利用した風評被害対策を行うことが重要であるということがわかった.特に,誤報を生む情報の訂正・修正 の要求を迅速に行うこと,顧客サービスの充実を普段から徹底することが重要である.

その後,会場より,風評被害と言うこともはばか られた頃もあり皆の意識の変革が必要である.TVのコメンテータが復興の鍵だったように風評を生むマスメディアからの訂正報道が重要である.ダイビングス ポットのオーナーの情報のように,人間関係,口コミの情報が重要である等の意見が述べられた.

最後に,大内会長より,九州(雲仙) のときには,風評被害ということ自体はばかられた.北海道は,風評対策に立ち上がれなかったという経験をもつ.今後も風評被害対策の研究を進めていくこと で,皆の意識を変化させていくことが重要であるとのまとめでセッションは終了した.

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